【撤退は失敗じゃない】山を諦める5つの判断基準
こんにちは、ささみんです!👋😊
今年の8月、私は山に行かずに帰ってきたことがあります。赤岳へ登るつもりで、山小屋も予約して、当日の朝はもう電車の中にいました。それでも途中の駅で降りて、引き返しました。
今日は「撤退」の話をします。引き返すのは失敗ではありません。ただ、頭でわかっていても、その場では本当に難しいんですよね。

なぜ、引き返せないのか
先に、判断を狂わせる仕組みのほうから書きます。ここを知っておくと、自分がその状態に入ったときに気づけるからです。
「もったいない」が判断を曇らせる
心理学でいうサンクコスト、埋没費用の話です。「ここまで4時間歩いたんだから、いまさら引き返すのはもったいない」「数か月前から計画してきたのに」——山ではこういう形で出てきます。
私にも身に覚えがあります。8月に北横岳へ行ったとき、交通費を計算したら14,000円かかっていました。この金額を払った日に「山頂は真っ白でした」となると、正直こたえます。お金と時間をかけたぶん、引き返しにくくなる。これは意志の強さの問題ではなく、人間の仕組みなんですよね。
「自分は大丈夫」と思ってしまう
もうひとつが正常性バイアスです。都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする心の働きのこと。「この雨ならまだ大丈夫」「もう少し行けば晴れるかも」と、悪い兆候を軽く見てしまいます。
集団だとさらに効きます。「リーダーが行くと言うから」「前のパーティが進んでいるから」。人がいる安心感は、危険を見積もる精度を下げます。ソロは孤独ですが、この点だけは有利かもしれません。誰にも引きずられずに済むので。
山を諦める5つの判断基準
① 天気:予報が変わったら、計画も変える
いちばん判断しやすいのが天気です。にもかかわらず、いちばん無視されやすい。
大事なのはルートの難易度と天気を掛け合わせて考えることだと思っています。同じ雨でも、平坦な樹林帯を歩くのと、鎖場のある岩稜を登るのとではまったく別の話です。赤岳をやめたのは、そこが理由でした。鎖場のある山で雨に降られるのは、分が悪すぎる。
そして出発してからも予報を見直す。私が引き返せたのは、電車の中でもう一度予報を確認したからでした。家を出た時点の情報で、その日いちばん重要な判断をする必要はありません。
② 体調:登る前から不安があるなら行かない
寝不足、風邪気味、前日の疲れ。「歩けば治るだろう」と思いがちですが、山では治りません。悪化します。
歩き出してからの基準も持っておきたいところです。いつもの登りで、いつもより息が上がる。足が思ったように上がらない。この違和感は、後半で必ず大きくなります。序盤でおかしいと感じたら、その日は下げる。前半で気づけたぶん、選択肢は多く残っています。
③ 時刻:先に「引き返す時間」を決めておく
これがいちばん実用的です。出発前に、ここまでに着かなければ引き返すという時刻を決めておく。専門的にはエスケープルートやタイムリミットの設定と呼ばれます。
なぜ事前に決めるかというと、その場では決められないからです。疲れて、山頂が近くて、時間が押している。そのときの自分は、いちばん判断力が落ちています。元気なうちの自分に決めてもらう、という考え方です。
目安として、昼までに山頂に着けない、暗くなる前に下山できそうにないと感じたら撤退が推奨されています。秋は日没が早いので、この基準はさらに厳しくなります。
④ 道迷い:おかしいと思った時点で引き返す
遭難原因の最多が道迷いです。そして道迷いには、はっきりした型があります。「おかしいな」と思いながら、そのまま進んでしまうという型です。
鉄則は「迷ったら引き返す」。現在地がわからなくなったら、最後に位置を確認できた場所まで戻る。下りたくなるのが人情ですが、沢へ下ると滝や崖に行き当たり、戻ることもできなくなります。
ヤマップ・ヤマレコなどのGPS登山アプリは必須ですが、スマートウォッチも遭難対策の必須装備だと考えています。スマホのGPSだけに頼るのは不安ですよ。
⑤ 不安:言葉にできない「嫌な感じ」も理由になる
最後は、説明のつかない基準です。なんとなく気が進まない。理由はわからないけれど、この先へ行きたくない。
これを軽く見ないほうがいいと思っています。言葉にできていないだけで、何かを感じ取っている可能性があるからです。風の音、雲の動き、足元の感触、自分の疲れ具合。それらを頭で整理する前に、体が先に警告している。そういうことは、あると思います。
撤退に、他人を納得させられる理由は要りません。とくにソロなら、説明する相手すらいないわけです。「なんとなく嫌だったから帰った」で、まったく問題ありません。
撤退しやすくする、3つの工夫
- 引き返す条件を、出発前に紙に書く:「◯時までに◯◯に着かなければ戻る」。書いておくと、その場での言い訳が効かなくなります
- 代替案を用意しておく:本命がだめなら別の山、それも無理なら温泉だけ。「行くか、帰るか」の二択にしないほうが、諦めやすくなります
- 撤退した日も記録に残す:登れなかった日を「なかったこと」にしない。判断した記録として残せば、それは失敗ではなく経験になります
ささみんのひとこと
赤岳を諦めた日のことを、正直に書きます。悔しかったです。小屋の予約も取れていたし、楽しみにしていました。電車を降りたときは、なんとも言えない気分でした。
でも今になって思うのは、あの判断で何も失っていないということです。赤岳はなくなりません。来年でも再来年でも、天気のいい日に登ればいい。逆に、雨の鎖場で何かあっていたら、失うものは山どころではありませんでした。
翌日、代わりに北横岳へ行きました。山頂は真っ白で何も見えませんでしたが、苔の写真がきれいに撮れました。予定どおりでなくても、山は山です。
撤退した日は、記録に残りにくいものです。写真も少ないし、報告することもない。でもあれは、ちゃんと判断できた日でした。そう思うことにしています。
まとめ
- 撤退を阻むのはサンクコストと正常性バイアス。仕組みを知れば気づける
- ①天気:ルートの難易度と掛け合わせて判断。出発後も予報を見直す
- ②体調:序盤の違和感は後半で必ず大きくなる
- ③時刻:引き返す時刻を出発前に決めておく。昼までに山頂に着けないなら撤退
- ④道迷い:おかしいと思った時点で、位置を確認できた場所まで戻る
- ⑤不安:言葉にできない嫌な感じも、立派な撤退理由
- 撤退に、他人を納得させる理由は要らない
山頂に立つのは目的のひとつであって、すべてではありません。無事に帰ってきた日は、全部成功です。今後も役立つ登山情報をお届けします!
ささみんの山行記録はこちら → YAMAP













